リターゲティング広告とは?効果的な設定方法と活用事例
導入
ウェブサイトを訪問したユーザーの多くは、初回訪問では購入や問い合わせに至りません。業界によって異なりますが、一般的に初回訪問でコンバージョンするユーザーは全体の2%から4%程度と言われています。残りの96%以上のユーザーは、何らかの理由でサイトを離脱してしまいます。
このような離脱ユーザーに対して、再度広告でアプローチする手法がリターゲティング広告(リマーケティング広告とも呼ばれます)です。すでにブランドや商品に興味を示したユーザーに広告を配信するため、新規ユーザーへの広告よりもコンバージョン率が高く、費用対効果に優れているのが特徴です。
リターゲティング広告は、Google広告では「リマーケティング」、Meta広告では「リターゲティング」と呼ばれますが、基本的な仕組みは同じです。本記事では、リターゲティング広告の仕組みから、具体的な設定方法、効果的な活用事例まで詳しく解説します。
リターゲティングの仕組み
基本的な仕組み
リターゲティング広告は、ウェブサイトを訪問したユーザーをトラッキングし、そのユーザーが他のサイトやSNSを閲覧している際に広告を表示する仕組みです。
技術的には、ウェブサイトに埋め込まれたトラッキングコード(GoogleタグやMetaピクセルなど)が、訪問者のブラウザにCookieを設置します。このCookieの情報を基に、広告プラットフォームは同一ユーザーを識別し、後日そのユーザーに広告を配信します。
ユーザーがサイトを訪問してから広告が表示されるまでの流れは以下の通りです。まず、ユーザーがウェブサイトを訪問し、トラッキングコードがブラウザにCookieを設置します。次に、そのユーザーが広告ネットワークに参加している他のサイトを閲覧した際に、Cookieが照合され、広告が表示されます。
リターゲティングが効果的な理由
リターゲティング広告が高い効果を発揮する理由はいくつかあります。
まず、既にブランドに接触したユーザーへのアプローチであることです。一度サイトを訪問したユーザーは、商品やサービスに何らかの興味を持っています。そのため、全く新規のユーザーよりも、購入意欲が高い傾向があります。
次に、購買検討プロセスに合わせたアプローチができることです。ユーザーが商品を認知してから購入に至るまでには、複数回の接触が必要とされています。リターゲティングにより、適切なタイミングで適切なメッセージを届けることができます。
また、カート放棄の回収にも効果的です。ECサイトでは、カートに商品を入れたまま離脱するユーザーが約70%にも上ると言われています。リターゲティングにより、これらのユーザーに購入を促すことができます。
プライバシー規制とリターゲティング
近年、プライバシー保護の観点から、リターゲティングを取り巻く環境は大きく変化しています。
AppleのiOS14以降では、アプリがユーザーをトラッキングする際に許可を求めることが必須となりました。これにより、許可しないユーザーへのリターゲティングが困難になっています。
また、GoogleはChromeブラウザでのサードパーティCookieを段階的に廃止する計画を発表しています。これにより、従来のCookieベースのリターゲティングは将来的に制限される可能性があります。
このような環境変化に対応するため、ファーストパーティデータの活用やサーバーサイドトラッキングの導入が重要になっています。
設定方法(Google/Meta)
Google広告でのリマーケティング設定
Google広告でリマーケティングを設定する手順を解説します。
まず、Googleタグの設置が必要です。Google広告管理画面の「ツールと設定」から「オーディエンスマネージャー」を開き、「オーディエンスソース」から「Googleタグ」を選択します。生成されたタグをウェブサイトの全ページに設置します。
次に、リマーケティングリストを作成します。「オーディエンスマネージャー」の「オーディエンスリスト」から「新しいリスト」を作成します。ウェブサイト訪問者、特定ページの訪問者、コンバージョンしたユーザーなど、様々な条件でリストを作成できます。
最後に、キャンペーンの設定を行います。ディスプレイキャンペーンまたは検索キャンペーンを作成し、「オーディエンス」のセクションで作成したリマーケティングリストを選択します。これで、リストに含まれるユーザーに広告が配信されます。
Meta広告でのリターゲティング設定
Meta広告でリターゲティングを設定する手順を解説します。
まず、Metaピクセルの設置が必要です。ビジネスマネージャの「イベントマネージャー」から「データソースを追加」を選択し、ピクセルを作成します。生成されたコードをウェブサイトの全ページのhead内に設置します。
標準イベントの設定も重要です。ページビューだけでなく、商品閲覧(ViewContent)、カート追加(AddToCart)、購入(Purchase)などの標準イベントを設定することで、より細かいリターゲティングが可能になります。
次に、カスタムオーディエンスを作成します。広告マネージャの「オーディエンス」から「カスタムオーディエンス」を作成します。ソースとして「ウェブサイト」を選択し、「すべてのウェブサイト訪問者」や「特定のページを訪問した人」などの条件を設定します。
最後に、広告セットの設定を行います。キャンペーンを作成し、広告セットの「オーディエンス」セクションで、作成したカスタムオーディエンスを選択します。
コンバージョンAPIの活用
プライバシー規制への対応として、サーバーサイドトラッキングの導入が推奨されています。
Meta広告では、コンバージョンAPI(CAPI)を使用することで、ブラウザを介さずにサーバーからMetaへ直接データを送信できます。これにより、iOSのトラッキング制限の影響を軽減し、より正確なデータ計測とリターゲティングが可能になります。
Google広告でも、サーバーサイドのタグ設定が可能です。Google Tag Managerのサーバーコンテナを使用することで、同様の効果を得られます。
オーディエンスリスト
リストの種類と設計
効果的なリターゲティングには、適切なオーディエンスリストの設計が不可欠です。主なリストの種類を紹介します。
全サイト訪問者リストは、最も基本的なリストで、サイトを訪問したすべてのユーザーが含まれます。認知拡大後のフォローアップや、幅広いアプローチに使用します。
特定ページ訪問者リストは、商品詳細ページ、価格ページ、サービス紹介ページなど、特定のページを訪問したユーザーのリストです。より購買意欲の高いユーザーにアプローチできます。
カート放棄者リストは、ECサイトで商品をカートに追加したが、購入に至らなかったユーザーのリストです。購入完了まであと一歩のユーザーなので、高いコンバージョン率が期待できます。
コンバージョン済みユーザーリストは、すでに購入や問い合わせを完了したユーザーのリストです。除外用として使用したり、アップセルやクロスセルの広告を配信したりできます。
リテンション期間の設定
リストのリテンション期間(ユーザーがリストに含まれる期間)は、商品やサービスの購買サイクルに合わせて設定します。
短期間(1日から7日)は、購買意欲が最も高い「ホットな」ユーザーへのアプローチに適しています。日用品や即決性の高い商品に効果的です。
中期間(7日から30日)は、検討期間が必要な商品やサービスに適しています。多くの商品カテゴリーでこの期間が効果的です。
長期間(30日から180日)は、高額商品や検討期間が長い商品(住宅、自動車、BtoBサービスなど)に適しています。また、季節商品のリマインダーにも使用できます。
オーディエンスの重複排除
複数のリターゲティングリストを運用する場合、オーディエンスの重複に注意が必要です。同じユーザーに異なる広告が同時に配信されると、効率が悪くなるだけでなく、ユーザー体験も損なわれます。
重複を避けるために、除外設定を活用します。例えば、「カート放棄者」リストに広告を配信する際は、「購入完了者」リストを除外します。また、「7日以内の訪問者」に配信する際は、「1日以内の訪問者」を除外して、重複を避けます。
クリエイティブ戦略
リターゲティング用クリエイティブの特徴
リターゲティング広告のクリエイティブは、新規獲得向けの広告とは異なるアプローチが必要です。すでにブランドや商品を認知しているユーザーに対して、購入を後押しするメッセージを届けることが重要です。
リマインド型のクリエイティブでは、ユーザーが閲覧した商品や関連商品を見せることで、再検討を促します。「まだお探しですか?」「お気に入りの商品が待っています」といったメッセージが効果的です。
インセンティブ型のクリエイティブでは、購入を後押しする特典を提示します。「今なら10%OFF」「送料無料キャンペーン中」「期間限定のお得なセット」といったオファーで、購入のハードルを下げます。
緊急性を訴求するクリエイティブでは、在庫状況や期間限定であることを伝えます。「残りわずか」「本日まで」「この商品を見ている人が他にもいます」といったメッセージが効果的です。
動的リターゲティング
動的リターゲティング(ダイナミックリターゲティング)は、ユーザーが閲覧した具体的な商品を広告として表示する手法です。ECサイトなど、多数の商品を扱うビジネスで特に効果的です。
動的リターゲティングを設定するには、商品フィード(商品ID、名前、価格、画像URLなどを含むデータ)をプラットフォームにアップロードし、商品IDを送信するイベントをウェブサイトに設置します。これにより、ユーザーが見た商品や、カートに追加した商品が自動的に広告に表示されます。
Google広告では「動的リマーケティング」、Meta広告では「ダイナミック広告」として、この機能が提供されています。
フリークエンシーキャップの設定
リターゲティング広告は、同じユーザーに繰り返し表示されるため、過度な配信は逆効果になる可能性があります。同じ広告を何度も見せられると、ユーザーは不快感を感じ、ブランドイメージが悪化する恐れがあります。
これを防ぐために、フリークエンシーキャップ(表示回数の上限)を設定します。一般的には、1日あたり3回から5回、週あたり15回から20回程度が目安とされています。ただし、最適な頻度は商品やサービスによって異なるため、テストしながら調整することが重要です。
活用事例
ECサイトでの活用事例
あるアパレルECサイトでは、以下のようなリターゲティング戦略を実施しています。
カート放棄者へのリターゲティングでは、カートに商品を追加してから24時間以内に離脱したユーザーに対して、「お買い物をお忘れですか?」というメッセージとともに、カート内の商品画像を表示する広告を配信しています。さらに、48時間経過後も購入に至らない場合は、10%オフクーポンを提示する広告に切り替えています。この施策により、カート放棄率が15%改善しました。
閲覧商品のリターゲティングでは、商品詳細ページを閲覧したが購入に至らなかったユーザーに対して、閲覧した商品と関連商品を組み合わせたカルーセル広告を配信しています。動的リターゲティングを活用し、パーソナライズされた商品提案を行うことで、CTRが通常の広告より2倍高い結果を得ています。
BtoBサービスでの活用事例
あるSaaSサービスでは、以下のようなリターゲティング戦略を実施しています。
資料請求ページ訪問者へのリターゲティングでは、料金ページや資料請求ページを訪問したが、フォームを送信しなかったユーザーに対して、導入事例やROIデータを含む広告を配信しています。具体的な成果数値を見せることで、検討を後押ししています。
ホワイトペーパーダウンロード者へのリターゲティングでは、ホワイトペーパーをダウンロードしたユーザーに対して、無料トライアルや製品デモへの誘導広告を配信しています。すでに興味を持っているユーザーに次のステップを提示することで、商談獲得率を向上させています。
旅行業界での活用事例
ある旅行予約サイトでは、以下のようなリターゲティング戦略を実施しています。
検索結果ページ訪問者へのリターゲティングでは、特定の目的地を検索したユーザーに対して、その目的地のお得なプランや空室情報を含む広告を配信しています。季節性を考慮し、繁忙期前にはより積極的にアプローチしています。
予約未完了者へのリターゲティングでは、予約フォームまで進んだが完了しなかったユーザーに対して、「〇〇の予約を完了しませんか?」というメッセージとともに、検討していたプランの詳細を表示する広告を配信しています。価格変動のリスクを伝えることで、緊急性を演出しています。
まとめ
リターゲティング広告は、すでにブランドに興味を示したユーザーに再アプローチする、非常に効果的な広告手法です。新規ユーザー獲得広告と比較して、コンバージョン率が高く、費用対効果に優れているのが特徴です。
効果的なリターゲティングを実施するためのポイントをまとめると、まず適切なトラッキングの設置が重要です。GoogleタグやMetaピクセルを正しく設置し、必要なイベントを計測できるようにしましょう。プライバシー規制への対応として、コンバージョンAPIなどのサーバーサイドトラッキングも検討してください。
次に、目的に応じたオーディエンスリストの設計が必要です。全訪問者、特定ページ訪問者、カート放棄者など、購買ファネルの段階に応じたリストを作成し、それぞれに適したアプローチを行いましょう。
クリエイティブは、リターゲティング専用のものを用意することが効果的です。リマインド、インセンティブ、緊急性など、購入を後押しするメッセージを心がけましょう。動的リターゲティングを活用すれば、パーソナライズされた商品提案も可能です。
最後に、フリークエンシーの管理も忘れずに行いましょう。過度な広告表示はユーザー体験を損ない、ブランドイメージを悪化させる可能性があります。
リターゲティング広告は、適切に運用することで、マーケティング全体の効率を大きく向上させることができます。ぜひこの記事を参考に、効果的なリターゲティング戦略を構築してください。