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RAGとは?社内データを活用したAI活用

RAG(検索拡張生成)の仕組みと企業での活用方法を詳しく解説。社内ドキュメントやナレッジベースを活用して、より精度の高いAI回答を実現する方法と、導入のステップを紹介します。

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目次

  • 1. 導入
  • 2. RAGの定義
  • 3. 仕組み
  • 4. 導入方法
  • 5. 活用例
  • 6. まとめ

RAGとは?社内データを活用したAI活用

導入

ChatGPTなどの生成AIは非常に便利ですが、企業での活用には一つの大きな課題があります。それは、AIが自社固有の情報を知らないということです。

社内の規程やマニュアル、過去の提案資料、製品仕様書など、企業には膨大な独自のナレッジがあります。しかし、一般的な生成AIはこれらの情報を学習していないため、自社固有の質問には正確に答えられません。

この課題を解決する技術が「RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)」です。本記事では、RAGの仕組みと、企業での実践的な活用方法について解説します。

RAGの定義

RAGとは、大規模言語モデル(LLM)の回答生成時に、外部の知識ベースから関連情報を検索して参照させる技術です。日本語では「検索拡張生成」と訳されます。

RAGが解決する問題

知識の限界:LLMは学習データに含まれる情報しか知りません。学習後に発生した出来事や、非公開の社内情報は回答に反映されません。

ハルシネーション:LLMは知らない情報について質問されると、もっともらしいが誤った回答を生成することがあります。これを「ハルシネーション(幻覚)」と呼びます。

情報の更新:LLMを再学習させるのは時間もコストもかかります。情報が頻繁に更新される環境では、常に最新の情報を反映させることが困難です。

RAGは、質問に関連する情報を外部から取得してLLMに提供することで、これらの問題を解決します。

RAGのメリット

精度の向上:関連する正確な情報を基に回答を生成するため、回答の精度が向上します。

最新情報への対応:知識ベースを更新するだけで、最新の情報を反映した回答が可能になります。

根拠の明示:回答の根拠となった情報源を示すことができるため、信頼性と透明性が向上します。

コスト効率:LLMを再学習させるよりも、はるかに低コストで独自の知識を活用できます。

仕組み

RAGがどのように動作するのか、技術的な仕組みを説明します。

基本的な処理フロー

RAGは大きく分けて「検索(Retrieval)」と「生成(Generation)」の2つのステップで構成されます。

ステップ1:事前準備(インデキシング)

社内ドキュメントなどの知識ベースを、検索可能な形式に変換します。文書をチャンク(小さな単位)に分割し、それぞれをベクトル(数値の配列)に変換してデータベースに格納します。このベクトル化には「埋め込みモデル(Embedding Model)」を使用します。

ステップ2:検索(Retrieval)

ユーザーからの質問を受け取ると、まずその質問をベクトルに変換します。次に、ベクトルデータベース内で、質問ベクトルと類似度の高いドキュメントチャンクを検索します。この検索により、質問に関連する情報が抽出されます。

ステップ3:生成(Generation)

検索で取得した関連情報と、ユーザーの質問をLLMに渡します。LLMは、提供された情報を参照しながら回答を生成します。回答には、根拠となった情報源を含めることもできます。

技術要素

ベクトルデータベース:Pinecone、Weaviate、Chroma、Qdrantなど、ベクトル検索に特化したデータベースが使用されます。

埋め込みモデル:OpenAI Embeddings、Sentence Transformersなど、テキストをベクトルに変換するモデルです。

チャンキング:長い文書を適切なサイズに分割する処理です。分割の方法によって検索精度が変わるため、重要な技術要素です。

LLM:最終的な回答を生成するモデルです。GPT-4、Claude、Geminiなどが使用されます。

導入方法

企業でRAGを導入する際の具体的なステップを説明します。

ステップ1:目的と範囲の明確化

まず、RAGで何を実現したいのかを明確にします。社内ナレッジへの質問応答、カスタマーサポートの効率化、マニュアル検索など、具体的なユースケースを定義します。

対象とする知識ベースの範囲も決定します。全社のドキュメントを対象にするのか、特定の部門や業務に限定するのかによって、導入の難易度が変わります。

ステップ2:知識ベースの整備

RAGの精度は、知識ベースの品質に大きく依存します。対象となるドキュメントを収集し、整理します。

データの収集:社内Wiki、マニュアル、FAQ、過去のメール、提案資料など、関連するドキュメントを洗い出します。

データのクリーニング:古い情報、重複した情報、不正確な情報を除外します。品質の低いデータはRAGの回答精度を下げます。

データの構造化:可能であれば、メタデータ(作成日、部門、カテゴリなど)を付与します。これにより、検索のフィルタリングが可能になります。

ステップ3:技術選定

RAGを実装するための技術スタックを選定します。

ノーコード/ローコードツール:技術的なハードルが低く、素早く導入できます。Microsoft Copilot Studio、Amazon Kendra、Azure AI Searchなどのマネージドサービスが選択肢になります。

フレームワーク利用:LangChain、LlamaIndexなどのフレームワークを使えば、より柔軟なカスタマイズが可能です。開発リソースが必要ですが、自社の要件に合わせた最適化ができます。

フルスクラッチ開発:最大限の柔軟性が得られますが、開発コストと期間が大きくなります。特殊な要件がある場合の選択肢です。

ステップ4:パイロット運用

小規模な範囲でパイロット運用を開始します。限られたユーザーに使ってもらい、フィードバックを収集します。

精度の評価:回答の正確性、関連性を評価します。期待通りの回答が得られない場合は、チャンキングの方法やプロンプトを調整します。

ユーザビリティの確認:使いやすさ、回答速度、UI/UXの問題を確認します。

ステップ5:本番展開と改善

パイロットの結果を踏まえて改善を行い、本番環境へ展開します。継続的に利用状況をモニタリングし、知識ベースの更新、精度の改善を行います。

活用例

企業でのRAG活用例をいくつか紹介します。

社内ヘルプデスク

人事規程、経費精算ルール、社内システムの使い方など、社員からの問い合わせに24時間自動対応します。FAQや社内マニュアルを知識ベースとすることで、正確かつ迅速な回答が可能になります。

バックオフィス部門の問い合わせ対応工数を大幅に削減できます。

営業支援

製品情報、導入事例、価格表、競合比較資料などを知識ベースとして、営業担当者の質問に回答します。商談準備の効率化、提案資料作成の支援に活用できます。

新人営業の早期戦力化にも効果があります。

カスタマーサポート

製品マニュアル、FAQ、過去の問い合わせ履歴を知識ベースとして、顧客からの問い合わせに対応します。オペレーターの支援ツールとして使えば、回答の質と速度が向上します。

技術ドキュメント検索

開発チーム向けに、APIドキュメント、設計書、過去の障害対応記録などを検索可能にします。ナレッジの属人化を防ぎ、チーム全体の生産性を向上させます。

まとめ

RAGは、企業が持つ独自のナレッジをAIに活用させるための強力な技術です。汎用的な生成AIの能力と、自社固有の情報を組み合わせることで、より実用的なAI活用が可能になります。

導入の鍵となるのは、知識ベースの品質です。AIに参照させるデータが正確で最新であれば、回答の精度も高くなります。逆に、データの品質が低ければ、期待した効果は得られません。

まずは小さな範囲から始め、効果を確認しながら徐々に拡大していくアプローチが推奨されます。RAGを活用して、自社のナレッジを最大限に活かしたAI活用を実現してください。

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